重さ59.2㌘ 長さ74.0㌢ バランス点18.5㌢（フェルールから） 芯のある弾き心地― ひとことであらわすとするのならば、このようになるかもしれません。 音やフィーリングといったものをことばにするプロセスには多くの語弊が伴う危うさを承知しながら、お伝えせずにはいられないところで つよさとしなやかさを併せ持つ素材を極限まで削り込み、絶妙な塩梅で反りを持たせることで得られる性能… などとしてしまうと、当たらずも遠からずというように感じてしまう。… 剛弓、柔らかい弓と表現なさる方もおいでになり私なりにいろいろ解釈してみたするのですが、弾きやすい弓ってそれだけでは釈然としないところがあって、 理屈抜きに弾きやすく癖になる感触を持っていたり、もっとバイオリンが弾きたくなったり。 着地点としては、靭やかで良い吸付きを持ち弦と馴染みつつ、ここぞのときに意志を持って楽器を鳴らし歌わせてくれるつよさを持つ弓。 奏者の意図や考えを汲み取り、より自分の腕の一部として同化してくれるような感覚― どこか説明してもしきれない何かが演奏を導いてくれるように思えてしまうのは、弓の辿った歴史、製作者の思い、はたまた音楽の"神様"がいらっしゃるのならばその導きのようなものすら関与しているのか… 考えが大いに飛躍してしまいる感は否めませんが、こういったアイデアはどこか切っても切り離せないように感じるところがあって、実際に当弓に触れてから自身が思い巡らしてきたことであり、 かえって弓選びをややこしくするといけないのですが、何とも風格のある佇まいとプレイヤビリティから「銘弓」と呼んで齟齬はないのかな、と感じる次第です。 先月あたまに毛替えをしていただきました。折れの修復歴や曲がりもありません。 オールドボウ、として入手しており出自は私見ですが19世紀後半あたりのジャーマンボウ、これはとくにフロッグなどに顕著で間違いないのではないかと考えます。 あとヘッドを見るとBausch,Hoyerファミリーの作品たちの残像が浮かんでは消えますが正確なアイデンティフィケーションはあまりにも奥深い世界ですから、いちバイオリン愛好家の妄想戯言と楽しんでいただけますと幸いです。